日本にワインという飲み物が伝来してから、かなり長い間試行錯誤を繰り返し、ワイン用のブドウの栽培が行われてきました。
外国産の苗木は日本の土地や風土に合わず、無事に根付かせるのが困難でしたが、川上善兵衛によりオリジナルの品種が開発されたところから、ブドウの栽培技術が大きく前進。さまざま種類のワインが日本各地でつくられるようになっていきました。
今回は現在日本各地で栽培されている中から、赤ワインによく使われる日本固有種について紹介していきます。
ワイン用のブドウの種類と特徴
食用のブドウとワイン用のブドウ両方とも使われることがありますが、基本的にはワイン用のブドウが使われます。
赤ワイン用
マスカット・ベーリーA
川上善兵衛が交配に成功して以降、全国各地のワイナリーでブドウ栽培が始められ、今でもこの品種を使ったワインが多くつくられています。
ベーリーとマスカット・ハンブルグ(ヴィ二フェラ種)をかけ合わせて生まれた品種で、2013年にO.I.V(Office International de la Vigne de Vin 国際ブドウ・ワイン機構)に品種名が登録されています。
ワイン醸造に使われるだけでなく、生食もできるブドウです。
マスカット・ベーリーAからつくられるワインは、タンニン量が少なく軽やかな味わいとなるため、樽熟成をさせない早飲みタイプが多いようです。
イチゴやラズベリー、またキャンディっぽい香りが感じられることから、フルーティーで渋みも少なく、赤ワインを飲みなれない人も比較的飲みやすいといわれます。
世界的にも認められた日本の固有種であり、以前よりも明らかに品質がよくなったとされるマスカット・ベイリーAは、今後もいろいろなワインに使用されていくでしょう。
ブラッククイーン
1927年に川上善兵衛によりつくられた品種で、ベーリーとゴールデンクイーンを交廃させたものです。
実は濃い黒色で果肉は軟らかく果皮は厚いのが特徴で、しっかりとしたタンニンと酸味を持ち、濃厚で芳醇な赤ワインがつくられる品種になります。
プラムやブラックベリーのような香りを感じる品種で、樽熟成するとバニラやカカオ、スパイスの香りも感じられます。
長野県と岩手県で主に生産されていますが、収穫量としては多くありません。
ヤマブドウ
日本固有種のヤマブドウは、古くから野山に自生しているつる性植物です。
ほかのブドウの木が雌雄同株なのに対し、ヤマブドウは雌雄異株という特徴を持ちます。
もともと日本の山に自生していた植物であり、寒さにも強い品種なため、丈夫で育ちやすいとされています。
ヤマ・ソーヴィニヨン
日本にもともとあったヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンをかけ合わせることで生まれた赤ワイン用の醸造専用品種。
山梨大学の山川祥秀が開発。病気に弱いとされていたヨーロッパ系のワイン醸造用ブドウと、暑さ寒さに強く日本の気候風土にも合うヤマブドウをかけ合わせることで、病害虫にも強く、育てやすい品種となっています。
カシスなどの黒いベリー系の香りを持ち、ヤマブドウ由来の酸味やスパイシーさを感じさせる野性味に加え、カベルネ・ソーヴィニヨンの持ち味である力強く深い味わいを感じることができます。
甲斐ノワール
病気に強く、日本の気候風土でも栽培しやすいブラッククイーンと、寒さに弱く、日本の土地で育てづらかったカベルネ・ソーヴィニョンをかけ合わせることで、耐病性があり、かつワインとしての味もよいというブドウの栽培を目的として、山梨県が開発しました。
酸味があり糖度も高く、カベルネ・ソーヴィニヨンに似た香りもします。
ノワールという名のごとく、黒いベリー系の香りとスパイスの風味が感じられるでしょう。
清見
1969年に北海道池田町が開発した品種で、フランスの「セイベル13053」という品種からクローン選別したものです。
通常開花から収穫まで100~110日かかるところを90日で収穫できる品種。
寒冷地でも栽培が可能なため、北海道の気候に適したブドウではありましたが、培土、排土作業が必要なため、さらなる研究開発が進められていきます。
酸味が強く軽い飲み心地が特徴。
山幸
田市が開発。耐寒性に優れ、有効積算温度が低くても熟すという、北海道にぴったりのブドウです。
清見では冬の間の培土といった枯死防止の作業が必要でしたが、山幸ではそうした対策も必要がなく、農家の労力を軽減できるメリットがあります。
山幸からつくられたワインは、色が濃く、ヤマブドウの味わいにも近い酸味の強さや渋み、深みのある味わいがあります。
また、この品種は、甲州、マスカット・ベーリーA に続いて、O.I.V(Office International de la Vigne de Vin 国際ブドウ・ワイン機構)に品種名が登録されました。
世界で認められたに日本固有種三つ目となっています。
まとめ
今回ご紹介した以外に、海外由来のブドウでつくられているワインもたくさんあります。
日本の土地に根付かせるまでには相当な苦労があり、試行錯誤を重ねて今に至るわけですが、黒ブドウ品種のコンコードや、川上善兵衛が日本に導入したキャンベル・アーリー、メルローやカベルネ・ソーヴィニョンなどは、日本の赤ワインによく使われています。
日本でワインの醸造が始められた当初は、ブドウの栽培もなかなかうまくいきませんでした。
しかし、あきらめずに試行錯誤を重ねた結果、海外のブドウの栽培も可能になり、日本の風土に即した新しい品種のブドウもつくられるようになりました。
こうして現在に至るまで研究と開発が続けられ、さらなる品種の改良に努めている人々のおかげで、少しずつ国際品種として認められるブドウも増え、日本のワインの国際的評価も高くなっていっているのは間違いなさそうです。
日本の国産ワインと中伊豆ワイナリーを心から愛するワインライター。ワインに関する知識はもちろん、その背景にあるストーリーや文化も大切に、初心者から愛好者まで、誰もが楽しめる情報をお届けします。すべてのワインに愛を込めて。特にお気に入りの伊豆ワインは、伊豆ヤマ・ソービニオンと海底熟成ワインらぶ・ま〜れです。
コメントを残す