ペコリーノは、イタリア中部のアブルッツォ州とマルケ州の高地で栽培される、希少な白ブドウ品種です。その名前は、イタリア語で「羊」を意味する「ペコラ」に由来しており、古くからこの地域で飼育されていた羊の乳で作られるチーズとの深い関係が伺えます。
高地で育まれる個性
ペコリーノが栽培されるアブルッツォ州とマルケ州の高地は、昼夜の寒暖差が大きく、日照時間が長いという特徴があります。このような厳しい環境で育つペコリーノは、厚い果皮を持ち、凝縮された風味を蓄えます。
歴史
ペコリーノは、イタリアのマルケ州の古いブドウ品種で、1875年の文献にも記載があります。強い塩味があり醸造が難しいため、20世紀には栽培が減少し、より収量の多いトレッビアーノ種などに取って代わられ、アルクアータ谷に限定されました。
しかし、1980年代末にグイード・コッチ・グリフォーニ氏の努力により、再び栽培が広まりました。ペコリーノの名前は羊を意味する「ペーコラ」に由来し、房の形が羊に似ていることや、羊が好んで食べていたことが名前の由来とされています。
トスカーナ州では「ドルチパッポラ」とも呼ばれ、1970年にはイタリア全国ブドウ品種記録書に登録されています。
ミネラル感あふれる独特の味わい
ペコリーノワインは、その産地の特徴を反映して、ミネラル感が非常に強く、海塩を思わせるようなヨード香が特徴です。また、白桃や洋梨、グレープフルーツなどの柑橘系の果実のアロマに、タイムやローズマリーなどのハーブの香りが複雑に絡み合っています。
酸味はしっかりと感じられ、余韻は長く、ミネラル感が口の中に広がります。若いワインは、フレッシュでフルーティーな印象ですが、熟成することで、蜂蜜やナッツのような複雑な香りが現れ、より深みのある味わいへと変化していきます。
料理とのマリアージュ
ペコリーノワインは、その個性的な味わいを活かして、さまざまな料理とのマリアージュが楽しめます。
魚介料理
脂ののった白身魚や、エビ、ムール貝などの貝類との相性は抜群です。ミネラル感が魚介の旨みを引き立て、ハーブの香りが料理にアクセントを加えます。
チーズ
ペコリーノチーズとの相性は言うまでもなく、特に同名の羊乳チーズとのマリアージュは、まさに運命の出合いともも言えます。チーズの濃厚な風味とワインのミネラル感が互いを引き立て、豊かなハーモニーを生み出します。
肉料理
鶏肉や豚肉のグリル、白身肉のソテーなど、シンプルな味付けの肉料理ともよく合います。ワインの酸味が肉の旨みを際立たせ、ハーブの香りが料理に奥行きを与えます。
パスタ
ペコリーノチーズを使ったパスタや、魚介を使ったパスタにもよく合います。ワインのミネラル感がパスタの塩気を引き立て、豊かな味わいをつくり出します。
ペコリーノを選ぶ際のポイント
- 産地: アブルッツォ州とマルケ州のどちらの産地のワインかによってスタイルが異なるのでお好みによって選びましょう。
マルケ州では、華やかな香りを引き出すため、長時間のスキンコンタクト(プレスする前にブドウを半分潰した状態で約4~24時間、低温で果皮と果汁を接触させること)を行います。一方アブルッツォ州では、マセレーションを行わないことが多いことから、あっさりとしたフレッシュなワインに通常仕上がります。 - つくり手: 自然派ワインをつくるつくり手から、伝統的な手法でつくられるワインまで、さまざまなスタイルのペコリーノがあります。
- ヴィンテージ: 若いワインはフレッシュでフルーティー、熟成されたワインは複雑な味わいが楽しめます。
まとめ
ペコリーノは、その希少性と個性的な味わいで、ワイン愛好家から高い評価を得ている品種です。ミネラル感、ハーブの香り、そして長い余韻が特徴で、さまざまな料理とのマリアージュが楽しめます。ぜひ、一度味わってみてください。
日本の国産ワインと中伊豆ワイナリーを心から愛するワインライター。ワインに関する知識はもちろん、その背景にあるストーリーや文化も大切に、初心者から愛好者まで、誰もが楽しめる情報をお届けします。すべてのワインに愛を込めて。特にお気に入りの伊豆ワインは、伊豆ヤマ・ソービニオンと海底熟成ワインらぶ・ま〜れです。
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