赤ワインの製造工程で、白ワインと大きく異なるのはあの深く濃い色にあります。
あの色を抽出するために、黒ブドウの果皮と種も果汁と一緒に発酵させます。そうすることで、赤ワイン独特のタンニンの渋みや深い味わいもまた生まれます。
実際にどのように製造しているのか見ていきましょう。
選果
収穫が終わったブドウは、人の手もしくは機械によって選果され、腐敗していたり、病気のものなど、健康ではない実や、未熟な果実を取り除きます。
適切な完熟度の果実を選別することで、適度なタンニンや豊かな果実味が得られます。
未熟な果実は青臭さをもたらし、逆に過熟な果実はワインを重くしすぎる可能性があります。
除梗・破砕
選別されたブドウは、房から果梗を取り除く除梗と、果肉と果皮を破る破砕を行います。
梗には、タンニン、配分、酸含量も多いのですが、発酵できる糖分はほとんど含まれていません。果汁に梗が混ざっていると、渋みや苦みが強いワインになってしまうため、除梗を行うことで、ワインのタンニンの量を調整することができます。
破砕は果実一つひとつの皮を開き、果汁を取り出しますが、破砕せずに圧搾すると果汁の量も少なくなり、ワイン自体の生産量も少なくなってしまいます。
発酵・醸し(マセラシオン:maceration)
まず、破砕されたブドウはタンクに入れられ、酵母が加えられます。酵母は糖を分解し、アルコールと炭酸ガスを生み出す、ワイン誕生の立役者です。温度管理や酵母の選定など、ワインメーカーの技量が光る重要な瞬間です。
数日間のアルコール発酵を経て、糖分がほぼ消費されると、圧搾機で果汁と果皮を分離します。圧搾方法によって、ワインの味わいや色合いが微妙に変化する奥深い工程です。
赤ワインの特徴である色やタンニンは、主に果皮に含まれています。そのため、発酵中に果皮と果汁を一緒に漬け込む「マセラシオン」と呼ばれる工程が、赤ワイン造りの真骨頂といえます。
マセラシオン期間はワインの個性に大きく影響し、数日から数週間と、ワインメーカーの哲学が込められます。
温度管理、酵母管理、マセラシオンなど、さまざまな要素が絡み合い、複雑な味わいを生み出す発酵・醸しの工程。まさに、ワインメーカーの創造性が試されます。
圧搾
圧搾には、自然圧搾と機械圧搾があります。自然圧搾は、発酵槽の底に溜まったワインを、重力によって果皮から分離する方法です。機械圧搾は、圧搾機を使って、果皮からワインを搾り出す方法です。
マロラクティック発酵(malolactic fermentation)
圧搾されたワインは、マロラクティック発酵を行う場合があります。
マロラクティック発酵は、ワイン中のリンゴ酸が乳酸菌の働きによって、ワイン中にあるリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解する発酵のことをいいます。
リンゴ酸の濃度が高いと酸味を強く感じますが、乳酸菌の働きによってリンゴ酸を乳酸に変化させることで、ワインの酸味がまろやかになり、コクや複雑味が増します。
また、マロラクティック発酵をさせることは、風味の問題だけではなく、ワインがより安定して熟成することができるようになるうえ、雑菌も発生しにくくなるといわれています。
赤ワインでは基本的に行われることが多いようです。
熟成
マロラクティック発酵が終了したら、ワインは熟成されます。熟成には、樽熟成とボトル熟成があります。
樽熟成は、オークなどの木樽にワインを詰めて、熟成させる方法です。樽熟成によって、ワインには樽の香りや風味が加わります。
ボトル熟成は、瓶に詰めたワインを、一定の温度や湿度で保管しながら熟成させる方法です。ボトル熟成によって、ワインの風味がさらにまろやかになり、複雑味が増します。
澱引き(スーティラージュ)
発酵が終わったばかりのワインには酵母や果肉片などの滓が混ざっているため、ワインの上澄みを別の容器に移し、熟成中に沈んだ滓を取り除きます。
この作業を熟成期間中に数回行います。
清澄・濾過
熟成が終了したら、ワインは清澄・濾過されます。清澄は、ワイン中の澱や不純物を取り除く工程です。
濾過は、ワインを均一な状態にするための工程です。
瓶詰め
清澄・濾過が終了したら、ワインは瓶詰めされます。
瓶詰め後、ワインはさらに熟成させられる場合があります。
まとめ
赤ワインの製造工程をご紹介してみました。
赤ワインの味わいは、収穫されたブドウの品種や品質、醸造方法によって大きく異なります。
それぞれの工程を理解することで、赤ワインの奥深さをより深く味わうことができるでしょう。
日本の国産ワインと中伊豆ワイナリーを心から愛するワインライター。ワインに関する知識はもちろん、その背景にあるストーリーや文化も大切に、初心者から愛好者まで、誰もが楽しめる情報をお届けします。すべてのワインに愛を込めて。特にお気に入りの伊豆ワインは、伊豆ヤマ・ソービニオンと海底熟成ワインらぶ・ま〜れです。
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